メジロとコーヒー

朝、寝起き直前の現実と夢の境界線をうろうろしている時、

遠くから母の悲鳴が聞こえた。かすかに、

「も〜やだ〜」と言っているようである。

私は夢うつつの状態ながら、はっきりと理解した。

 

起きがけに濃いめのコーヒーをすすり、新聞を読んだ。

開け放たれた窓からは秋の澄んだ空気が流れ込み、肌をやさしくなでる。

一杯目のコーヒーを飲み終わり、二杯目を注ぐ。

外を眺めたくなって、ベランダに出る。

ベンチの横の段ボールにいつもいるやつがいない。

保護ネコである。

しばし、ぼーっとする。

秋の朝はまことに心地の良いものである。。。

そんな時ー

 

母「ねえ、これ見た?」

 

うしろからいきなり登場し、ちりとりを見せた。

いつもある場所より、高い位置にあったせいか私の視界には入っておらず

当然上に何があるのかも見えていなかった。

 

私は油断していた。

 

遠くの景色から、ふっとちりとりに目を落とすと

そこにはメジロの亡骸があった。

 

最悪な気分に突き落とされた。

 

そうなのだ。

朝の悲鳴は保護ネコがメジロをくわえて見せに来たことへの叫びだったのだ。

私は知っていた。

何かを持ってきたのだろう。

だが、朝の心地よさにすっかり忘れていた。

私は残りのコーヒーを一気に飲み干した。

冷たくて苦かった。。。