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【速報】ネコと散歩中に珍獣と遭遇

興奮冷めやらぬ、震える手でしたためる。

現在夜の9時50分。

 

ついさっきの話だ。

風呂から上がって、歯磨きして、炭酸水をグラスに一杯飲んだ。

『あ、散歩に行こう』

草履を履いて、外に出る。

「ぷすぷす」

ネコが出てくる。

ちなみに「ぷすぷす」とはネコの名前ではなく、呼び出し音だ。

空気音なので、散歩中の他人の犬とかにやっても

飼い主に気付かれることなく犬を呼ぶことができる。

そしてこのネコは飼い猫というか、地域猫なのだが、うちに居ついてしまった

超地域限定ネコなのである。(外飼い)

そして一緒にお散歩ができる特殊な訓練を施してあるのだ。(嘘)

 

話を戻そう。

庭を出て、ほぼ直線の見通しの良い公道に出る。人通りはゼロだ。

街灯は大体50メートルごとにあるし、民家も近く安全である。

少し歩くと、小さな森がわきにあるのだが、そこから奇妙な音が聞こえた。

私の少し後ろを歩いていたネコを見ると、ネコも森の方に聞き耳を立てている。

「カサカサ カサカサ」

落ち葉を踏む音のようだ。

あたりはものすごく静かだが、私たちは耳をそばだてている。

「カサカサ カサカサ」

やっぱり何者かが歩いているようだ。

しかも右耳は近くの足音を、左耳は遠くの足音を聞いている。

二人が少し距離を置いて、そろりそろりと歩いているイメージが浮かんだ。

『ヒト? 若者がふざけてる?』

でも、ヒトの声はしない。

あたりは相変わらず静まり返っているが、

何かが落ち葉の上を歩く音だけが空気を揺らす。

ネコを見る。

さっきと同じ姿勢で微動だにせず、物音に集中しているようだ。

もしかしたら夜行性のネコの目にはナイトスコープで見たかのように

正体がはっきりと見えているのかもしれない。

足音は右手から左手へと確実に歩を進めている。

「カサカサ カサカサ」

もしかして、本当にヒトだったら、仲間が近くにいるかもしれない。

息を潜めて、街灯に照らされて闇に浮かぶ私たちを闇の中から見ているかもしれない。

そんな恐怖が忍び寄りつつあった。

私はあたりを見回したが、やはり人っ子一人いないのだ。

それはまたそれで怖いのだが。

そしてついに足音が消えた。

森を抜けたのだ。

森の終わりは崖崩れ防止のコンクリートで出来た斜面に出る。

私たちがいる街灯の下からはだいたい30メートルくらい先から始まっている。

そして街灯はその20メートル先にある。

私は目をこらした。

街灯の少し手前にぼんやりと影が見えた。

でも、街灯が逆光になっており、見えずらい。

私はもっと手前に焦点を合わせた。

今度はちゃんとはっきりと見えた。

暗闇の中にはっきりとその姿を目撃した。

これが暗順応である。(ちがうか)

「たぬきだ(小声)」

ネコはさっきまで私の右手にいたのだが、

たぬきが現れるやいなや、左手に移動、前のめりで食い入るように見ている。

たぬきは我々の存在にどうやら気づいていないみたいだった。

となると、下手すりゃこっちにくるかもしれない。

ネコが襲われるかもしれない、と思ったら、たぬきが気づいた。

こちらを見ている。

目が暗闇に不気味な光を放っている。

ドキドキしてきた。

いや、物音を聞いている時からドキドキしていたけど、

目があったような気がして、よけいにドキドキしてきたのだ。

「やばいよ。もう帰ろう。(小声)」

とネコに言っては見るが、ネコもどうやら動けないらしい。

多分初めて見る生き物に好奇心と恐怖が混ざって、

なんとも変な気持ちに私たちはなっていたんだと思う。

「ね、もう帰るよ。怖いから、帰るよ(小声)」

ようやく私の声に反応してネコは踵を返した。

私はゆっくり後ずさりをし、ネコは得意の忍足を使った。

ようやく安全な距離にきたところで、私たちは小走りになった。

「怖かったね〜、たぬきだよ〜、あれ、たぬき。

 初めて見たね〜、すごいね〜(まだ小声)」

ネコにたぬきを教えたところでだが、恐怖体験をした同志である、

私は無事に帰還できた喜びと、恐怖に負けなかったその勇敢さ、

なんかよく分からない高揚感などなどひっくるめて

ネコを撫でてやった。

そしてネコは寝床へ、私はこうしてブログを書いている。

現在夜の10時45分。 

 

たった一時間前の10分ぐらいの出来事でした。